涼宮ハルヒの覚書

涼宮ハルヒシリーズの小説・アニメ・その他関連することに関する覚書(メモ)です。

キリスト教雑誌「Ministry」vol.26のハルヒ特集について(と、ハルヒを応援する山本弘氏の話)。

以前、上記のようなつぶやきを見つけて「ウム、縁遠い宗教雑誌とはいえハルヒの特集があるならチェックするしかあるまい」と思い、実際に買って読んだのですが、紹介しそびれていたので今します。

 

Ministry(ミニストリー) 2015年 08 月号 [雑誌]

Ministry(ミニストリー) 2015年 08 月号 [雑誌]

 

 

結論から言いますが、この特集自体はファンの方としては別にチェックする必要のあまりない記事でした。

というわけで、まずはどうがっくりだったのかをご紹介いたします。

 

f:id:ishijimaeiwa:20151108215158j:plain

 

タイトルは「『涼宮ハルヒの憂鬱』にみるキリスト者の選択」で、ほぼ巻末に近い88ページ・89ページの見開き部分の特集です。

どんなことが書かれているのかを要約しますと、ぶっちゃけ「セカイ系」の説明で、エヴァからの系譜の中でハルヒの作品説明をしているだけです。話の主題は「セカイ系」についてで、その補足としてハルヒという作品の存在が語られている程度です。なので、作品としてのハルヒの考察や読解はほぼありません。むしろエヴァの話の方が多いくらいです。

唯一、文末の数行でハルヒの作品にも少々絡むセンテンスがありますが、以下のような感じです。

 

キョンハルヒを選ぶために自問自答した。「Ready? その設問に、おまえはイエスと答えたんだ」。神の問いかけに、あなたは誰の名前のついた世界を選ぶのだろう。

 

その「イエス」は人の名前じゃねえよ! ダジャレかよ!!*1

 

というわけで、よっぽどのハルヒファンの方でも、この特集のためだけにわざわざ取り寄せる必要はないかなあ、というのが個人的な所感です。

せっかく劇中でも古泉君の口から「神」という単語が出てるのだから、キリスト教サイドからのもっとガチの考察が読みたかったなあ。しっかりしてくださいな、波勢邦生さん(この記事のライターの方)。

 

 

という感じだったのですが、じゃあ雑誌としてつまらない・読みどころのない本だったかというとさにあらず。他のコーナーは結構面白かったです。

というわけで、以下、他のコーナーをほめます。

 

たとえば、SF作家の山本弘さん(グループSNEを作ったりと学会をやったりしていた人)に宗教について尋ねるインタビュー記事や、香山リカさん(ファミ通で「尻に目薬目に坐薬」というコラムを書いていた人)が老人ホームの経営者と対談する記事など、オタクサイドでも結構有名な人が出ていて(たまたまだと思うけど)、読みやすい記事が多かったです。

 

特に前者の特集『ハタから見たキリスト教 ニセ科学もカルト宗教も楽しんで免疫を作る SF作家 山本弘さん』は面白かったです。

SF愛好家特有の不思議を面白がって求める立場から見た宗教の話に始まり、人種差別、オタク差別、右傾化、そして急に艦これの話(オタク達は単純に右傾化してるのではなくて、ゲームと現実を区別してフィクションとして楽しんでるよ)、ニセ科学、「体感治安」ときて、最後に宗教に期待することについてまで、かなり幅広く、いろんな面から宗教や世の中のことについて語っています。

終始、神様信じていないサイドからの話だし、インタビュワーも無理に「神を信じろ!」というわけでもないし、普通に読み物として自由な感じで面白かったです。

というか、不思議を面白がって探究し、UFOだろうが宗教だろうがオバケだろうが都市伝説だろうが楽しむ山本氏のスタンスがまんまハルヒと同じで、むしろこっちのコーナーの方がよほどハルヒ特集だった気がします(逆に、ハルヒのあの性格は、それ自体が「SF」だったんだなあ、とも思いました)。

 

山本弘氏と言えば、ごく初期からハルヒを面白がっていた人の一人です。ちょっと「山本弘 ハルヒ」で検索しただけでも、彼のブログのこんな記事があたりました。

hirorin.otaden.jp

 もうひとつ、共感を覚えたのは、モユルがデビュー当時の高橋留美子の作品を読んで、「今のサンデー読者にこれがわかるわけがない!」「俺だけは認めてやろう!!」などと偉そうなことをのたまうくだりである。
 まったく同じこと、僕もやった!
うる星やつら』の連載がはじまった当初、「これは面白いけど、マニアックすぎて読者に受けないだろう」と思ったよ。せめて僕だけでも心の中で応援してやろうと。
 今思うと、恥ずかしいなあ。
 実はずっと後になって、同じ失敗をやらかした。『涼宮ハルヒの憂鬱』を出版直後に読んで、「これは面白いけど、若い読者に受けないだろう」と思ったのである。この話は僕がSFファンだからこそ納得でき、共感できるのであって、SFの素養がない人間はついてこれないだろうと。だから、せめて僕だけでも応援してやろうと、『monoマガジン』の連載で取り上げたりもした。
 その後のことはご承知の通りである(笑)。
 それ以来、自分の「これは受ける」「これは受けない」という直感は、絶対に信用しないことにしている。

 

うーん、このmonoマガジンの連載も読みたくなってきた! 山本弘氏とハルヒのライン、SFとしてのハルヒのラインでも、これからいろいろ調べていこうと思います。

 

というわけで、結果的にはいい出会いがあったので、買ってよかった「Ministry」でした。ハルヒ特集をしてくれてありがとう、波勢邦生さん。

 

 

おまけ。

というか、山本弘氏もこの特集についてご存知でした。

あなたの記事の方が面白かったですよ!(幸か不幸か…)

*1:しかもこれは「憂鬱」じゃなくて「消失」のシーンだよ。