涼宮ハルヒの覚書

涼宮ハルヒシリーズの小説・アニメ・その他関連することに関する覚書(メモ)です。

「深夜アニメ発映画興行記録」を分析してみた(ラブライブとかアイマスとか消失とかの興収の話)。 #haruhi

昨晩、上記のようなつぶやきがどこからか流れてきました。

これを見て「ラブライブってすごいんだなあ」と素朴に思いつつも、はて、消失ってこの程度だっけ? とも感じました。

単にこの数字だけ見ると、数ある作品の中で「そこそこですなあ」という程度の印象ですが、当時の実感としてはもうちょっと盛り上がりがあったような…

 

というわけで、上記作品群について各種数字を調べてみました。数字や表やお金の話がニガテでない方は以下からどうぞ。

 

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サラリーマンの大好きなExcel表です。

なお、各種数字はwikipediaの各ページからこれだろうというものを拾いました。間違いなどありましたらご指摘くださいませ。

 

こうして見てみると、確かにラブライブ! の28億は驚異的です。

というか、アニメと特撮を除く普通の邦画は、ヒット作と言われるようなものでも10億以下が普通なので、アニメに限らず映画全体で見てもかなりすごい数字ですね。

 

なお、下記のサイトによりますと、歴代映画の中で28億とタイなのは「ターザン」(1999)、「少林サッカー」(2002)、「ヴァン・ヘルシング」(2004)、「名探偵コナン 銀翼の奇術師」(2004)、「沈まぬ太陽」(2009)、日本国内歴代総合興収ランキングでは333位になるようです。ラブライブ! はまだ上映中なので最終的にはもっと上になりそうですね。

 

日本国内歴代総合興行収入ランキング 1位 - 100位 - 映画ランキングドットコム

 

一方、ハルヒ関連で目を引くのは、その上映館数の少なさです*1

涼宮ハルヒの消失」は、数ある深夜アニメ発映画の中でも、かなり上映館数が少ないところから、そこそこの数字を出しています。

この点を鑑み、興収を上映館またはスクリーン数で割った数字、つまり、その映画を上映することで1館(またはスクリーン)あたりどれくらい興収があったか=賑わっていたか、という数字を出してみたいと思います。

 

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こうして見るとハルヒはぶっちぎりです。

最初に勇気をもって上映を決めた24の映画館はウハウハだったでしょうね。かくいう私も池袋シネマサンシャインに公開直後に4回見に行きました。

 

ただし、ここにも数字の罠があって、ここで取り上げられている「上映館/スクリーン数」というのは、封切直後に上映した映画館またはスクリーンの数であり、封切後上映を決めた映画館の数は入っていないのです。

 

というわけで、最終的に何館/スクリーンで公開したのかという数字も追ってみました。

 

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タイバニとサイコパスは残念ながら最終的な上映館数の数字が探せなかったので、リストから外しました。ファンのみなさんゴメンナサイ。

 

「上映館/スクリーン数(最終)」という項目で、はてなマークがついていない数字は、映画の公式サイトやwikipediaなどで見つかった数字です。

はてなマークがついている数字は、残念ながら数字が見つからなかったので、映画の公式サイトの「上映映画館一覧」などのページに掲載されていた映画館の数を手数えしました。

けいおん! の「倍近く」というのは、wikipediaの該当のページにそう書いてあったのでそのまま記載しています。

 

だいたいどの映画も封切時から順次公開映画館を増やしていくわけですが、この封切時と最終の数字が離れていれば離れているほど「当初ヒットを期待されていなかったけど、人気があったから広まった」と言えそうです。

その伸び率で言えば、けいおん! が2倍弱、アイマスが2倍強、マクロスFが4倍弱、消失が一番率が高く4倍強、他は1.5倍程度のようです。

 

せっかくなので、最終的な1館/スクリーンあたりの平均興収も表にしてみました。

 

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本当はこの他にも上映期間などの数字や来場者特典なども参照したくなるのですが、今回はひとまず置くことにします。

 

こうして見ると、なんだかんだでやっぱりラブライブはすごいという話になります。ハルヒも結局100館以上で上映していたので、平均してみるとまあそこそこなわけですね*2

 

というわけで、単純に数字で見てみると「涼宮ハルヒの消失」は、現在から振り返ってみれば「期待に比べてはまあヒットした作品」ぐらいの評価が妥当なようです。

 

 

一方、今回数字を見てみて感じたのは、ハルヒのすごさは「単館系映画なのに、期待に反してヒットした」というところそのものにあったのだな、という再確認でした。

 

というのも、2010年といえばたった5年前ではありますが、当時は深夜アニメからヒット映画が出るということはあまりなかったわけです。

(マクロスFも深夜アニメでしたが、こちらはどちらかというと深夜アニメというよりはガンダムエヴァンゲリオン等のロボットアニメの系譜で、そちらの系譜での映画のヒットはそれ以前にもありました)

ハルヒラノベやアニメがいくらヒットしていたとはいえ、元々地方局の番組であり*3、漫画ならいざ知らずライトノベルという年配にはよくわからないものが原作ということもあって、映画関係者から冷ややかな目で見られていたことは想像に難くありません。全国24館からのスタートという数字がそれを物語っています。

 

ところが、大方の予想を覆して「涼宮ハルヒの消失」は公開初日から大盛況。遅れること上映を決定した映画館が、私の手数えによりますと2月の封切以降、3月に6館、4月にも6館、5月になってから29館、6月に30館とどんどん増えていったわけです。そのせいで、冬の話なのに暖かくなってから見に行った人も多かったのではないでしょうか?

 

ハルヒの成功をけいおんがしっかり引き継ぎ、「深夜アニメはヒットする」という認識を映画関係者も持つようになったため、その後の深夜アニメ発映画も、そもそもヒットを期待されて潤沢な上映館/スクリーン数で公開できるようになっていった、ということかと思うのです*4

 

地方局から全国でのヒット、YouTubeやニコ動への展開など、メディアを超え期待を上回ってきたハルヒが、映画の世界でも常識を壊して「深夜アニメの映画はヒットする」という今につながる新しいスタンダードを作ったという軌跡が、件の数字とその背景から見て取れました。

 

 

数字だけ見ると「なんだハルヒ結構しょぼいな!」ですが、上記の通りファンとして誇りを持てる素晴らしい作品だったんだな、と思った次第です。

 

 

おわり。

 

 

涼宮ハルヒの消失 限定版 [Blu-ray]

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今回のブログ記事ではあくまで数字のみを取扱い、作品の内容については触れませんでしたが、当然作品としても面白いので、「涼宮ハルヒの消失」未見の方はぜひ見てみてください。

 

ただ、ストーリーの都合、少なくとも以下の作品を見てからご覧いただくのがよろしいかと思います。

 

涼宮ハルヒの憂鬱4 笹の葉ラプソディ (第1巻) 限定版 [DVD]
 

 大丈夫、面白いからすぐに終わります(強引なオチ)。

*1:館数とスクリーン数という数字はそれぞれwikipediaなどから引いてきましたが、一つのシネコンの3スクリーンで上映した場合、上映館数は1、上映スクリーン数は3となります。単純比較はできないことはご了承ください。

*2:なお、正確には8.4億という数字は2010年7月末までのものであり、8月以降も上映していた映画館は20館程度ありました。ですが、その多くが単日公開、長くても2週間程度の上映だったので、あまり大きなインパクトはなかったかと思います。

*3:今からは想像しにくいですが、ハルヒローカル局番組だったので、関東の人はリアルタイムで見られなかったんですよ!

*4:上記リストにはありませんが、今年公開の「心が叫びたがってるんだ。」は深夜アニメを中心にヒットアニメを生んできたスタッフによるオリジナル作品ということで、封切時のスクリーン数が142とのこと。こんなこと、5年前までは出来なかったわけです。ただし、期待だけでなく、ちゃんと興収10億超えの成果を出しているここさけも本当にすごいです。