涼宮ハルヒの覚書

涼宮ハルヒシリーズの小説・アニメ・その他関連することに関する覚書(メモ)です。

エッセイ『涼宮ハルヒの限界―全能神にできないこと』試し読み版。 #haruhi #C94

haruhimemo.hatenablog.jp

今年もあっという間にコミケの季節が近づいてまいりました。ということでハルヒ系サークルさんをまとめる上記の記事を書いたのですが(力作なのでぜひ読んでね!)、その過程で昨年は自分が書いた原稿の試し読み版をアップしていたことに気づきました。

haruhimemo.hatenablog.jp

(余談ですが上記原稿の完全版が電子書籍になりました! 続きが気になったらぜひ!)

sos-todai.booth.pm

 

ということで(?)、今年もそれをやりたいと思います。

今回は「ハルヒの能力って本当に神の如く全能なの? 限界があるんじゃないの?」「ハルヒが他人を害するような願望を持つことってあるの?」という考察エッセイです。全12ページのうち冒頭の約3ページ分を掲載しちゃいますので、ぜひお試しにお目通しくださいませ。

これでSOS団東大支部の冊子の売れ行きにいい影響があるとも思えませんが、万一これがキッカケで買うことにされた場合は、当日ブースで私にお申し出ください。私が喜びます。あと、買わないにしても、ハルヒシリーズの考察に役立てていただければ幸いです。

 

それでは以下、レッツゴー!

 

涼宮ハルヒの限界―全能神にできないこと』著:いしじまえいわ

 

 涼宮ハルヒは願望を実現できる神の如き能力を与えられた少女である――これは読者、視聴者も作中キャラクターも多くが了解する、本シリーズの根幹となる設定である。このハルヒの能力とキョンの一人称視点という制約のおかげで(作品で明示されている記述と矛盾しない範囲で)いかようにも解釈を楽しめるのが本シリーズ原作とアニメ版の美点の一つである。

 一方「それは無理があるのでは」という類の解釈に出くわすこともある。たとえばアニメ版「ライブアライブ」にてENOZのメンバーが怪我をしたのはハルヒが文化祭でバンド出演したいという中二的な欲望を満たすためにそう望んだからだ、というものだ。作品をよく知っていれば直感的にハルヒが他人を傷つけて自分に利することを望む人物でないと分かるが、先述の通りハルヒには願望を実現する能力があるため、ENOZメンバーのアクシデントをそれと結びつけて考えることを理由なく無理筋と断ずるのもまた論理的に難しい。

 しかし、そもそもハルヒの能力は本当に何でも実現できるのだろうか? 彼女の能力に限界がないとしても、その発端となるのは彼女の人格から生ずる願望であり、そこには現実的なレベルでの限界があるはずだ。願望を無限に働かせよ、と言われて本当に望むものを何もかも想像できる者がいるだろうか? ハルヒの願望の限界が見いだせれば、作品考察の前提となる妥当なラインを設定することができる。

 そこで本稿では作中で発現したハルヒの能力や願望を個々に分析することでその法則性を見出し、彼女が実現できないことについて答えを求めたい。

 本論に入る前にオチを明かしておくと、この考察による結論は完全なものにはなり得ない。作品が完結していない上に1人称という形式のため作品世界内の普遍的真理が描かれ得ない以上帰納法的に観測する他なく、今後のシリーズ展開によって彼女の傾向が変わることや新たな設定が付与され、観測結果が変わることも大いにあり得るからだ。長門の言う通り「無矛盾な公理的集合論は自己の無矛盾性を証明できない」のだ。分かるのはあくまで現状の傾向だけだが、それでも作品解釈のための妥当なラインを引くことくらいはできるだろう。

 

涼宮ハルヒの限界の前提
 対象は2009年版のTVアニメ版及び劇場版『涼宮ハルヒの消失』とした(エンドレスエイトI~VIIは対象外)。ハルヒが発現したと思われる事象をカウントし、それらをそれぞれ「A:物語の根幹に関わる、ハルヒの能力によると断定すべき事象」「B:ハルヒの能力の関連が明示または示唆されている事象」「C:直接的な言及はないが考察の余地がある事象」「D:考察によってハルヒの影響ではないと判断できる事象」の4つに分類 し、それを元にハルヒの能力と願望の傾向を分析した (表参照)。

 なお、本作では登場人物が真実を口にしているとは限らないと作中で明言されており、主人公もまた真実を口にしないことのある信頼できない語り手であるため、作中で描かれるあらゆる事象が嘘かもしれないという可能性をはらんでいる。だが、「実は舞台は外宇宙の別の星でした」というレベルの嘘があったとするとこれまでの物語の解釈そのものが成り立たなくなる。そこで、読解を成立させる上で最低限真実であると思われる事象をA、作中でハルヒの影響が登場人物に明示または示唆されているが、発言の真偽を疑いうるものをBと分類した。

以上が冒頭部分で、以下、アニメ版各エピソードの考察と、まとめとしての物語や設定の考察、という流れになります。

なお、上記設定でアニメ版をチェックした際の表が以下のものです。 Aがハルヒの能力で発声させた事象、Bがハルヒの生のはずだけど確証はないもの、Cが考察によってはハルヒのせいかも? という事象、Dはハルヒのせいではないと考えられる事象、です。

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こうして並べてみると結構気づくことがないでしょうか? ぜひみなさんのハルヒ考察ライフにお役立ていただければと思います。

また「これ書き漏らしてんぞ!」「この事象も対象じゃない?」ということが見つかりましたらぜひお知らせくださいませ。もう原稿には間に合いませんが個人的な考察の糧にいたします。

 

それでは、8月11日(土)、SOS団東京大学支部のブースでお会いしましょう! 場所は東テ03bです!! 国際展示場で僕と握手!!!

 

(おわり)

 

 

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