8月2日(日)17時頃、特に何の前触れもなくハルヒ関連最新グッズの発表がありました。それがこちら。
アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」「涼宮ハルヒの消失」よりそれぞれ、涼宮ハルヒと長門有希の浮世絵企画が始動し、現在開発中の浮世絵見本画像が公開されました。
商品内容:木版画1枚、専用額付き、証明書、解説書
絵寸:W約227mm × H約360mm 額:W約413mm×H約528mm×D約35mm
素材(本体):和紙(人間国宝 岩野市兵衛 越前生漉奉書)
素材(額):木材・裏版・木製合板
価格:未定
発売時期:未定
2020年は『涼宮ハルヒの消失』公開10周年、2021年は『涼宮ハルヒの憂鬱』放送15周年という事で両作品からそれぞれハルヒと長門がラインナップという事だそうです。
ハルヒの絵は月刊Newtype2009年9月号の表紙絵ですね。画集によると原画は西屋さん。背景は元々真っ白だったので、今回のものは描き下ろしのようです。
長門の方は京アニがコミケに出展していたC79のハルヒグッズセット内のクリアファイルのものがベースなようです。原画は誰だろう? 私は見分けがつくほどアニメーターさんに詳しくないので、分かる方教えてください!
で、気になるのはお値段。未定とのことですが、おいくらくらいになるんでしょう?
ということで、以下類似する商品をいくつか見てみました(※販売終了したものもあります)。
ハルヒと同じくカドカワストアより販売のリゼロ木版画は55,000円。アニメーターさんによる描き下ろしで、一版100枚限定抽選販売で三版まで生産されたようです。
49版64回の摺り重ね。和紙はハルヒと同じく越前生漉奉書紙。絵寸は縦38.5cm×横25.5cm。
こちらもカドカワストアで商品で、原作イラストレーターの深崎暮人さんによる描き下ろし。第1弾の加藤恵(中央)は先着200枚限定で、第2弾第3弾とつなげて1枚の絵にできるそうです。お値段各55,000円。絵寸は幅約227mm × 縦約360mm
20版70回の摺り重ね。和紙はやはり越前生漉奉書紙です。なお、サイト内の能書きが一部リゼロと同じでした。
こちらのミクさんはどなたの作画によるものかは分かりませんが、21版45回摺り重ねだそうです。紙はもちろん越前生漉奉書紙。第三版まで各100枚発売だったようです。お値段45,000円。絵寸は縦37cm×横24.5cm。
木版は通常400回くらいの使用に耐えるそうで、300枚くらいなら品質に違いはないとのこと。本商品の場合右下に「第一版」「第三版」などの記載がされていたようです。ハルヒのも数量は300枚限定とかになるかもですね。
なお、上記サイトでは他にも『SAO』や『ガルパン』、『ドラゴンボール』などの浮世絵もラインナップされていて、『リゼロ』も同じメーカーによるものでした。
■ルパン三世×伝統工芸×浮世絵のコラボレーション
ご覧の通り描き下ろし。こちらも紙は越前和紙で、これはどこも同じなようです。お値段は少し高くて各64,800円。高い分額が豪華なような気がします。絵寸は340mm×200mm。少し小さめ。
5枚セットの五連絵図はなんとお値段540,000円。それもそのはず、原作者のサインが書き込まれるものだったそうです。今となっては貴重品ですね。
以上、1枚ものだと45,000円~65,000円くらいが相場なようです。そこからハルヒも5万円前後になるものと思われます。描き下ろしじゃないから5万以下だと嬉しいなあ。
今後続報が出るそうなので、どれくらいの値段になるのかみなさん期待して待ちましょう!!
以下余談。
※ちょっとネガティブ指向なのでそういうのが気になる方は閲覧回避推奨です。
さて。
5万円前後の木版画ということで、多くの商品がイラスト描き起こしの気合の入ったものになっていました。私がざっと見た中で既存絵そのままだったのは、ミクと同じページにあった下記の『ドラゴンボール』の表紙絵を使ったものくらいでした。
で、今回のハルヒと長門の浮世絵ですが、こういったマニア向け商品ならではのこだわりが薄いように感じるんですよね。
まず、なんといっても描き下ろしじゃないこと。他の作品の絵は多くが絵自体も衣装デザインも新規というこだわりようで、一方ハルヒは既存絵の流用です。
ハルヒの絵は背景は新たに描き起こされていますが、私はそこにも違和感を覚えました。何故SOS団の他4人がやぐらの上にいてハルヒ1人が下にいるんでしょう? ハルヒは一体誰に向かって微笑んでいるのでしょう? 他の4人を躍らせて、何故ハルヒは彼らの方ではなくこちらを見ているのでしょう? その辺りの設定の作り込みちゃんと誰かがしたのでしょうか? 正直、あまり物語を感じる絵には思えません(その点、シンプルに美人画な長門の方は違和感はないです)。
京アニは最近ハルヒ関連作品を手掛けていませんが、それでも2016年発売の『涼宮ハルヒの大成』のインナーパッケージは新規作画のハルヒ、長門、みくるちゃんでしたし、メーカー特典の絵や雑誌ピンナップも複数新規で起こしてくれてるんですよね。
ケース柄のパネルも展示されてました。終わったらこれもくれ!(強欲) pic.twitter.com/9jZrsTMbUo
— 【非公式】涼宮ハルヒの覚書@ハルヒ考察本とら&メロン&BOOTHにて取扱中! (@haruhimemo) 2016年12月2日
反射して何がなんだか分からないけど、メーカー予約特典のA3イラストボード! Amazon以外ならこれもついてきます。角が丸くカットされてました。結構薄そう。 pic.twitter.com/e9abWKzwk3
— 【非公式】涼宮ハルヒの覚書@ハルヒ考察本とら&メロン&BOOTHにて取扱中! (@haruhimemo) 2016年12月2日
例の事件の結果今の京アニさんにハルヒを描ける方がもうあまりいないのかもしれません。それならそれで原作のいとうのいぢさんにお願いするという手もあります。2018年のザスニ30周年記念グッズの描き下ろし3人娘は素晴らしいものでした。
アニメのアニバーサリーだからアニメ絵を使う、というのは分かるのですが、亡くなった西屋さんの原画をノンクレジットで使うことにも正直抵抗感があります。
京アニが新規絵を起こせない事情はこれを購入検討するレベルのファンなら当然分るでしょうから、それならいっそ正直に「当時の西屋さんの絵をそのままベースにして木版画で再現しました」もしくは浮世絵風であることはいっそ捨てて「複製原画にしました」と複製原画を発売する、とかなら普通に納得できるのですが…
次に「これは浮世絵か?」という問題もあります。浮世絵というのは江戸時代のイラストや版画のスタイルのことですが、このハルヒと長門の絵は浮世絵テイストを模したものではありません。ただの和装イラストです。描いた人(しかも故人)の意に添わない商品名を付けるのはいかがなものかと思います。
題字などが入って多少それっぽくしているので「浮世絵風」なら分かります。また、この商品は浮世絵風であることよりはマジモンの木版画である事の方にバリューがあるはずなので「浮世絵風木版画」と称するのならいいんじゃないかと思います。
また、絵そのもの以外の部分での作り込みの弱さも気になります。ハルヒの絵には『エンドレスエイト』でのループ回数を示唆した「壱萬五千四百九十八景」という文字が入っていますが、15,498回ループしたのは原作の方であって、アニメ版は15,532回だったはずです。アニメ版のアニバーサリーグッズだったのでは? 加えて言うと『エンドレスエイト』のアニメ化からは11、2年しか経っておらず、アニバーサリーイヤーではありません。
また『~景』というのは『富嶽三十六景』のように名所の風景の数を表す語の筈です。ゴロ的なパロディなのは分かりますが、「じゃあ他の15,497個の名所ってどこだよ」という気にもなります。
あと何といっても一番文句を言いたいのは、何故みくるちゃんをハブった? ということです。ザ・スニーカー30周年記念グッズでも「ハルヒいっぱいブランケット」「長門いっぱいブランケット」を出して後藤邑子さんに「私のは?」ってツッコまれていましたよね。
何故KADOKAWAはヒロインの間に差をつけるようなことをするのでしょうか。ファンとしては正直不快です。
過去の商品の売れ行きを考慮してのことだと思いますが、そのマーケティングデータは本当に信頼するに足るものですか? 私の記憶が正しければ、上述の3人娘女神タペストリーでイベント当日最初に売り切れたのはみくるちゃんだったはずです(数量調整されていたのかもしれませんが)。
『冴えカノ』みたいに3つつながる絵だったらよかったのに、と思います。もっといえばさらにハブられがちなキョンと古泉くんのグッズもちゃんと出してほしいです。ハルヒ・長門・みくるはSOS団3人娘であっても=SOS団ではありません。SOS団は5人だし、私はSOS団5人のグッズが一番欲しいのです。
以上のように、個人的には今回の商品のファーストインプレッションは「作り込みが弱いなあ」「他の浮世絵木版画が売れてるからって手ぇ抜いてない?」「浮世絵版画のフォーマットにハルヒの既存絵を落とし込んだだけでは?」というのが正直なところです。これでもし『リゼロ』や『冴えカノ』と同じ5万円だったら「足元を見ているなあ」と感じることでしょう。
と、つらつらとネガティブなことを書いてしまったので、最後に希望的なことも書いておきます。
本商品が「京アニ作画の既存絵の使いまわし」ということを逆に活かすなら、個人的注目ポイントは瞳の作画の表現です。
京アニ作画はもちろん全体的なクオリティが高いのですが、一番のポイントは瞳の描き込みの細やかさだと思っています。もしアニメ業界先端技術である京アニの繊細な瞳の作画が、日本の伝統表現技法である木版画で再現されるのだとしたら、そこにはそこそこ高いお金を払うだけの価値があるはずだと私は思います。なので、続く商品情報でどれくらい緻密な作画再現がなされているかには注目したいと思います。
また、和紙&木版画による浮世絵は150年くらい前のものでも割と現存していますから、顔料の質さえよければ今流通している印刷されたイラストや本などよりも長い時間の保存に耐える可能性があります。
仮に「300年もちます!」とか言われると、コレクションが好きなマニアとしては有難がらざるを得ないのではないでしょうか(私は有難がります)。
というわけで、続報での商品詳細情報に期待したいと思います。企画している人、ぜひ気合の入った商品を開発して紹介してくれよな!!
(おわり)